三沢博昭と西海の教会

遺作写真展

2009.6.8mon─7.3fri
am11:00─pm8:00

最終日7/3はpm5:00まで

450年前、フランシスコ・ザビエルによって日本に蒔かれたキリスト教の種、それが250年という長い迫害の時を経て復活したのです。西海の各地に建てられた教会群はまさにその歴史を証するものです。いまこれらの教会を世界遺産にという運動が湧き起こっています。


生涯建築を撮り続け、今年1月惜しくも他界した写真家故三沢博昭の30余年の歳月をかけた渾身のライフワークです。

三沢博昭(みさわ・ひろあき)
建築写真家
昭和19年(1944)北海道生まれ。三沢建築写真事務所代表。土木を撮る会会員。歴史的な建築、町並み、土木構造物、遺跡などを主なテーマとして日本及び世界各地を広く撮影。
1999年度 土木学会賞(出版文化賞)受賞(『土木造形家百年の仕事』)
2000年 文化財保護功労者として表彰
2009年1月没

主な作品
■甦る古墳文化 1978年 サンポージャーナル
■空間流離 1981年 建知出版
■現代和風建築集(6)洋風との邂逅 1984年 講談社
■台所空間学 1987年 建知出版
■町並み保存のネットワーク 1987年 第一法規出版
■長崎居留地大いなる遺産 1989年 長崎市教育委員会
■韓国現代住居学 1990年 建知出版
■町並み紀行上・下 1992年 毎日新聞社
■日本名建築写真選集(17)民家 1993年 新潮社
■白川郷、五箇山の合掌造り集落 (世界遺産記念出版) 1996年
■土木造形家百年の仕事—近代土木遺産を訪ねて 1999年 新潮社
■国宝 高岡山 瑞竜寺(瑞竜寺国宝記念出版) 1999年 
■大いなる遺産 長崎の教会 2000年 智書房
■近代和風建築 智頭の石谷邸 2001年 智書房
その他社寺・民家・町並み・遺跡などの修理・調査報告書の写真多数

写真展
■1977年 第一回個展「日本の原空間・石室」(新宿ニコンサロン)
■近代土木遺産を訪ねて「土木造形家百年の仕事」
監修:篠原 修
主催:(社)日本土木工業協会
1996年2月 第一回目を東京駅丸の内北口ドームにて開催 以後全国を巡回中
■大いなる遺産長崎の教会写真展
1999年鉄川与助展(長崎市)/2000年カトリック浦上教会(長崎市)/2001年アルカス佐世保(佐世保市)/2001年文京シビックホール(東京)/2002年浜屋百貨店(長崎市)/2004年富士フォトサロン(5月福岡 6月大阪 7月東京2005年2月広島)/2006年7月ソウルカトリックセンター/8月釜山日報社釜日ギャラリー/2008年 5月〜2010年4月 遠藤周作文学館 企画展「遠藤周作と長崎の教会」

長崎の教会を撮り続けて
初めて出会った教会は長崎市のはずれ、外海にある大野教会でした。当時30歳を越えたばかりの私は、1976年のある日、建築学会の調査リストに「大野教会:石造り・明治時代の教会」の記載をみつけました。石の造詣文化に興味を持っていた私はさっそくおんぼろのスバルにカメラの機材を放り込み、三日がかりで長崎の外海にたどり着きました。ド・ロ壁といわれる独特の工法で積まれた石の教会。鬼瓦の部分に漆喰で浮き彫りされた十字架がなければ、教会とは想像もできない素朴な建物。ド・ロ神父というフランス人宣教師が私財を投じて建てた教会、そこにはかつて熱い信仰と静かな生活が存在していたことを物語っていました。
私と長崎の教会の出会いはこうして始まったのです。
当時の長崎には明治以後に建てられた多くの教会が存在し、信者によって大切に使われていました。それらは二百五十余年にわたる厳しい迫害に耐えたキリシタン達が、その迫害の歴史が終わった時、大きな声で祈ることができる自分たちの教会を建てようと、貧しい暮らしの中からの献金、労働奉仕によって造ったのでした。
あちこちの入り江に、山あいに、ひっそりと建てられた神の家は木造、石造、煉瓦、そしてコンクリート造りと、時代を追って、形を変えながら建てられ続けてきました。 そんな教会を撮り続けて三十年近くに経ちました。いまや信教の自由は憲法によって保障され、物質的にも豊かな時代になっています。
ところが、島々の教会は過疎や老朽化で、その多くがなくなったり、使われなくなったりしています。使われなくなった教会は魂が抜け、精気が失われていきます。ものは残っていても精神がなくなると教会はただの建物になってしまうのです。それを見続けて来たことは大変寂しいことでした。
四百五十余年もの昔、波頭を越えて日本にもたらされたキリスト教。長い迫害の末、明治になってたくましく復活したキリシタン達。そんなキリシタン世界で西洋文化と日本文化が出会い、長崎の教会建築という独特の建築を醸し出しました。
これらの教会は私たち日本人が歩んだひとつの歴史の証明といえるでしょう。そんな教会を大切に保存し、なんとか文化財として残していくことはできないのだろうかと考えました。無理であればせめて自分の写真の中でだけでも、その姿をとどめたい、そう思ってこの写真展を企画しました。

2004年5月 三沢博昭

(この文章は2004年フジフォトサロンでおこなわれた「大いなる遺産長崎の教会写真展」において寄せたコメントです)

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